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【最終回特別編】大榎克己監督
Vol.9 進化し続ける指揮官・大榎克己
低迷するワセダを救うべくア式蹴球部の監督に就任したのが3年前。大榎克己監督(昭63教卒)は選手たちとともに走り続けてきた。4年目を迎えた今季は『RETADOR』(スペイン語で挑戦者)のスローガンを掲げる。選手との絆、監督の抱えるジレンマ、さらには日本サッカー界の進化について――指揮官は柔らかな、しかし熱を帯びた口調で、語ってくれた。
――鈴木修人選手(スポ4)からの質問です。1人のときは何をなさっているんですか?
サッカーのことばかり考えています。
――監督がサッカーを始めたのは?
小学校2年生です。
――いつもスーツをびしっと着こなす監督ですがこだわりは?
ネクタイですかね。現役の頃から試合にはネクタイをして行ってたので。普段しないものなので、ネクタイを締めると気が引き締まって戦闘態勢に入れますね。
――かつて所属していたJ1・清水エスパルスでは長谷川健太氏(現清水監督)、堀池巧氏(現サッカー解説者)とともに三羽ガラスと言われていましたが、今の早大でいうと?
まあ今の代ではダブルシュート(山本脩斗=スポ4、鈴木修)と兵藤(慎剛=スポ4)ですか。
――選手たちにフランクに接する印象が強いですが
それはグランドを離れたら俺も一人の人間って部分では同じですし、年もそんなに離れてないしね。選手と監督って立場は違うけど、俺は選手たちを仲間と思っているし、やっぱり同じ人間だから。
――理想のサッカー像はありますか?
やっぱりバルサ(スペイン・FCバルセロナ)みたいに人もボールも動くサッカーは見ている方もやっている方も楽しいよね。指導者としてもああいうサッカーが理想です。理想はね…(苦笑)。
――と、言うとやはり理想と現実に開きがありますか?
やっぱりバルサのサッカーをしろといっても無理なわけで。理想だけを追っていてもいいサッカーはできないからね。どれだけやりたいことを追求した上で、現実的なものに転化できるかって作業が求められるので。本当に監督って職業はその作業の繰り返しですよ。理想と現実のギャップの中で、どこで妥協点を見つけられるか。それに尽きますね。
――元日本代表の監督の目から見て今の日本サッカーは
俺が子供の頃からすれば、すごく進歩してるよ。プロのJリーグができて環境面でも、またサッカーに対する意識も変わってきてると思う。代表もW杯に出場して世界で戦えるようになったしね。世界トップクラスに入るのはまだまだ時間がかかると思うけど、やっぱりそれでも成長してますよ。
――昔とはだいぶサッカーの仕方も変わりましたね
そう。指導者の成長も一因としてあるよね。昔では考えられない指導方法もありますから。若い選手もどんどん世界にチャレンジしていって、そこで尻込みしないって本当に大きな進歩ですよ。
――大学サッカーはその若手の「チャレンジ」を生み出す場になるのでしょうか?
Jリーグができた頃はJに行けない選手が行く別の道って思われていたけど、ここ何年かで位置づけが変わってきたと思います。いまJで活躍している選手も大学から入った選手が多いですし、高卒でプロに行っても何もできずに駄目になってしまう選手もたくさんいますし。決して無駄な4年間ではないと思うし、色々なことを学んで吸収することで人間的にも成長できる場でしょうね。4年間サッカーを頑張ってフィジカルにも慣れて、そこでJにいけるかという判断を選手が自分で下していくと。
――最後に、大榎監督にとってア式蹴球部とは?
やはり自分がお世話になったところだし、何とか復活させたいという思いからここまでやってきました。4年生とは彼らが1年生の頃に私が就任して一緒に戦ってきた。最初の都リーグから始まってだんだん形は出来てきましたから、あとは仕上げの段階ですね。彼らに優勝させてあげたい。長い伝統ある歴史がア式にはありますけど、その中で今だけしかない、このチームですから、練習から一つ一つを大事にしてやっていきたいですね。
紡がれた言葉に込められていたのは、ア式蹴球部への、そしてサッカーへの“愛”だった。長らく第一線で培った経験を糧に蒔き続けた種は実を結び、1部リーグで優勝を争うまでにチームは成長した。完成の域に達したワセダに手応えを感じつつ、まだ見ぬタイトルへたゆまぬ前進を。きょうもグラウンドには大榎監督の声が響く。
(取材・編集 斎藤 純)
※取材は前期リーグ中のものです。
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