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高度な戦術理解力 小吹和也(人3)
「どこのポジションで出ようと自分のプレーをするだけ」。何番の背番号を身につけるかは分からない。11番、12番、13番、14番、15番・・。WTB、CTB、FBと、試合によって与えられる役割は全く違う。けが人を抱え、BKのレギュラーが固定されないなか、コンスタントに試合に出場。不慣れなポジションでも、そつなくこなす。「陰のMVP」。今季のワセダにとって、小吹和也(人3)の貴重な存在感は際立っている。
本職は、FB。正確なキックと力強い突破が持ち味。密集地帯へも果敢に飛び込む。豊かなセンスから1年時より、将来を嘱望されていたが、同じポジションに一つ上の学年の内藤慎平(人4)がいたこともあり、出場機会に恵まれなかった。頭角を表し始めたのは、昨年の後半から。大学選手権準決勝、決勝ではスタメン出場を果たした。決勝では内藤慎平がWTBに入り、清宮克幸監督(平2教卒)に「(小吹が)切り札だった」と言わせるほどの存在に登りつめた。
そして迎えた今季。FBのメンバーの名に小吹の名が刻まれるのは当然のことかと思われた。しかし五郎丸歩(スポ1)の加入により、他のポジションによって出場することを余儀なくされる。春は主にWTB、夏の関東学院大戦では、初めてCTBをつとめた。対抗戦が始まっても、WTB、CTB、FBすべてのポジションを経験した。試合途中にポジション変更することもザラ。試合を決めるようなビッグプレーはないが、どのポジションに入ろうと、状況に応じた判断で、確実に対応している。もはや「ユーリーティプレーヤー」という枠組みには収まりきらないほどの活躍を見せている。実はここに小吹の凄さが潜んでいる。
「戦術理解力の高さ」。他のプレーヤーとは一線を画す、小吹の特徴だ。強い、巧い、速い。ワセダにもこれらを兼ね備えた選手は多数いる。小吹もこれらを持ち合わせていないわけではないが、突出しているわけではない。しかし、「戦術理解力の高さ」は目を見張るものがある。FBに入れば、最後尾からBK全体にポジションの取り方を指示し、CTBに入れば、WTBとの距離を大切にする。また、試合前半にBKの連係で、ミスがあると、ハーフタイムなると、すぐに選手に駆け寄り、プレーを確認。後半には見事に修正してくる。これだけ多くのポジションを柔軟にこなせるのも、チームの戦術を充分理解し、把握しているからだ。
しかし、複数のポジションをこなすのに、葛藤がなかったわけではない。「自分でも勝負できて、まわりも生かす」ことを信条としていようと、夏に初めてCTBで起用すると伝えられたときは「戸惑った」。それでもチームのことを思い、清宮監督と話し、受け入れた。「もう自分のなかで整理できました。ポジションは関係ないです」。菅平を下り、交流戦を迎えたころには、晴れやかに語る姿があった。
「王座奪回。それしかない」。対抗戦の開幕直前に、今季の目標を聞いたとき、引き締まった表情で即答した。当然それはワセダにとっても同じこと。昨年の決勝の悔しさは脳裏に焼きついている。自身のプレーにも納得いっていない。試合途中に、ケガをして思うような働きが出来なかった。今季、ここまで複数のポジションを淡々とこなしてきたのも、この最大にして唯一の目標のため。おそらく今後もポジションは固定されないだろう。だが、どこで出場しようと、揺ぎない決意は変らない。2005年、1月9日、国立のピッチで歓喜を味わうまでは。(堤之 剛)
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