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妥協なき姿勢がもたらす底力
史上最年少三冠王、ベストナイン5回を始め、挙げれば切りがないほどの記録がこの男によって生み出された。鳥谷敬(人)、大学4年間で
培ったアマチュアナンバーワンプレーヤーという誇りを胸に、プロという新たな世界へ旅立つ。
人間科学部スポーツ科学科スポーツ推薦入試の第一期生として早大に入学。1年生の春季から早くもクリーンアップを任され、2年生の春季
に史上最速タイでの三冠王を達成。3年生の春季に優勝を初体験し、以後4年生の秋季を迎えるまでに4連覇という偉業を成し遂げた。簡単に
振り返ってみただけでも、鳥谷の大学4年間の軌跡には非の打ち所がない。そんな鳥谷の形容詞として最も用いられているキーワードが「走攻
守」。松井稼頭央(米大リーグメッツ)以降、これほど「走攻守」という言葉によって称えられたプレーヤーがいただろうか。野球が持つ魅力
の全てを、妥協することなく追求していく。その真摯な姿勢こそが人々を惹きつけて止まない所以である。
数え切れない取材の中で、いつもマシンの用に繰り返される言葉があった。「チームのために」。スーパースターでありながら、己のことは
いつも後回し。無理なバッティングは避け、繋ぎに徹する場面も少なくなかった。しかしながら、最後の最後に本来のがむしゃらなプレーを垣
間見ることが出来た。03年、秋季の早慶二回戦。すでに優勝が決まっていたこの試合には、鳥谷の2度目の首位打者がかかっていた。試合開
始時、3位に控えていた鳥谷は、ヒット打たなければならない状況にあった。そんな逆境の中で放たれた2本のヒット。自ら「最も難しい」と
位置づけていたタイトルを、土壇場で奪い去った姿に底力のようなものを感じた。
球界屈指の人気球団である阪神タイガースに鳴り物入りで入団したことで、尋常なほどのプレッシャーの中にある。そして、目の前にそびえ
立つだろう高い高い壁。それでも、妥協なき姿勢がもたらしたあの底力があれば、必ずしや球界を代表するプレーヤーになれると信じてい
る。
(吉津卓保)
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