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 早慶野球(秋)号 



 三連覇も三冠王も決めたる! 田中幸

一面  ボールはバックスクリーンへ飛んでいく。東大2回戦での2点本塁打は、田中幸長主将(スポ4)会心の一撃だった。「打撃で後悔したくない」ラストシーズン、自分らしいスイングを追い求めてきた。一打席にすべてを懸け、長打を意識してフルスイングすることで、4年間で最高の成績につながっている。現在三冠王のワセダの4番は、ライバル慶大にも容赦はしない。打撃でチームを引っ張る男が見いだした究極の一振りで3連覇を決める!

 ミートした瞬間、思った。「これはいったのでは」。東大2回戦の4回、東大・楠井が田中幸に投じた2球目。狙い通りの直球をこん身の力で振り抜くと、打球はバックスクリーンへ。4回のビッグイニングの口火を切った2点本塁打は、「今季唯一納得のいく」大きな一打だった。

 勢いもあり、日本一まで一気に駆け上がった春。田中幸の頭にはチームの勝利が第一にあった。多くの安打を放ったものの、走者が出たら進塁打、走者が三塁にいるなら外野フライを狙うというチームバッティングを優先していた。「それでは自分としての魅力がない」。六大屈指の投手たちとも最後の戦いとなる秋は、後悔はしたくなかった。一打席を大事に、そしてもう一度自分らしい長打を――。このスタンスで徹底的に長打を意識した打撃練習を重ねた。

 2打席連続本塁打という鮮烈なデビューで幕を開け田中幸の4年間は、「長打」とは切っても切れないものだった。そのパンチ力を生かした打撃を期待されるあまり、スランプに陥った時期もあれば、復活を果たすためあえて単打を意識したこともある。さらに、主将として挑んだ4年春には手首のケガもあり、持ち味を捨てざるを得なかった。しかし、後悔しない打撃をテーマに掲げたラストシーズンに、「打ちたい」と思ったのはやはり長打だった。長打は田中幸自身の最大の魅力であり続けたのだ。

 一打席一打席、長打への意識を徹底させた結果、ここまで打率は4割を優に超え、本塁打も3本。4年間で一番の成績を残し、打撃3部門すべてトップにつけている。「取りたい気持ちがないといえばうそになる」と話す、強打者の証し・三冠王も現実味を帯びてきた。それにもかかわらず、今季本人が満足のいく当たりはバックスクリーンへたたきこんだあの一本のみ。「理想とするスイングにはまだまだ」と、秋は試合が終わるごとに、細かい修正をし続けた。その姿勢も好調の一因だが、田中幸は「修正しても新たに課題がでてくる」と決して慢心することはない。大一番の早慶戦は、ベストの状態で臨んでくれるはずだ。

 いよいよ決戦のとき。得意とする早慶戦を制すれば、3連覇が達成される。探求し続けた、究極のスイングで慶大投手の球をしばきあげれば、最高のバッティングになるに違いない。その一振りが、伝統の一戦で見られることをスタンドは待ち焦がれている。

(渡邉りさ) 








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