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 早慶野球(秋)号 



 他を圧倒する存在感 武内

 一体どこに投げればいい。一体どこで守ればいい。相手はその答えも見つからぬまま、ただぼう然と打球が弾むのを見届ける。その打者は、主将・武内晋一(人4)だ。春は優勝を手にしたものの、個人の成績は納得できるのもではなかった。しかし夏場の打撃改革が奏功し、今季は向かうところ敵なしの活躍を見せている。「思い切ったプレー」が信条の、記録と記憶に残る名選手がここにいる。武勇の心を内に秘め、晋(すす)み続ける一塁手。今、打撃の極みへ。

 完全優勝を成し遂げた春。チームが歓喜に沸く一方、そこには不振にあえぐ武内の姿があった。打率2割3部6厘は1年春以来の低打率。「自分のおかげで優勝できたと言われるようにしたい」。開幕前に語ったその言葉とは裏腹に、早大は投手陣の活躍で春の栄冠を手にした。

 試行錯誤。春季リーグが終わると、幾度も打撃フォームを改造。結果たどり着いたのが、現在のオープンスタンスだった。体を前に向けることでしっかりとボールを見極め、足を開くことで右足を上げたときに肩をねじらなくなった。その効果は抜群。選球眼をそのままに保ち、鋭い打球を連発した。

 フォームだけではない。意識も春とは変わった。今まで12本打ってきた本塁打へのこだわりを捨て、「低い当たりのライナーで野手の間を抜く」を合言葉に。目にも止まらぬ引っ張りの打球が持ち味だったが、長打を狙わずに左方向への意識を増やした。外角の球も逆らわずに流し打つことで、3方向への打ち分けが可能に。これにより相手は、武内対策として外角攻めをすることも、引っ張りを警戒して極端に右寄りに守備位置をとることもできなくなった。改革の成果は数字という形で現れる。2年春以来の打率4割超え。目下首位打者である。「玉磨かざれば光なし」。自身が座右の銘とするその言葉のとおりに、武内は努力の末、自らの手で光を取り戻したのであった。

 入学直後から、黄金世代に囲まれてリーグ戦4連覇を達成。すると以降は「勝って当たり前」というプレッシャーが自然とまとわりつく。中軸を任されるようになり、武内にはさらなる重圧がのしかかった。そんなときでも4年間変わらず信じ続けたことは、「何かを考えて野球をやるのではなく、神宮のグラウンド上では、ただ思い切ったプレーをする」ということ。自分の形を何かに左右されて見失いたくはない。ミスを恐れてはいけない。相手のペースであっても、初球から振っていく。決して俊足ではなくとも、盗塁を仕掛ける。その姿勢が裏目に出たときもあったが、積極的にいった上でのミスは常に「仕方ない」と割り切る。確固たる信念が、今の武内の姿をつくり出したのだ。

 卒業後は小さいころからの夢であったプロの世界を目指す。この早慶戦が、早大・武内晋一の集大成。もちろん最後まで、ただ思い切ったプレーをするだけだ。そうすれば、いつもどおりの快音が神宮に響くはずだ。4年間の思いを乗せた打球が、野手の間を抜けていく――。

(牧野賢志) 






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