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苦悩の道駆け抜け早大
「試行錯誤の1年でした」。五十嵐毅駅伝主将(人4)のこの言葉に、今季の早大の苦難は凝縮される。チームとしては大きな成果を残せなかった春のトラックシーズン。力を発揮し切れなかった箱根予選会。まさかの途中棄権に終わった全日本大学駅伝。だがこの逆境が分岐点となり、チームはいよいよその力を発揮しはじめた。
五十嵐の不調に歩を合わせるかのように今季の早大は伸び悩んでいた。篠浦辰徳(人3)の三千?障害2冠など、個人での活躍は光った春のトラックシーズン。だがこの時期、早大を引っ張るべき五十嵐は苦しんでいた。原因不明の体調不良。「走りでチームを引っ張る」という主将にとって、歯がゆい日々は続いた。柱が揺れた春の早大、チームとしては殻を破れずじまいに終わる。
夏が過ぎ、木々は赤みを帯び、勝負の駅伝シーズンは訪れる。7位通過と大苦戦を強いられた箱根予選会。個人総合3位に入った杉山一介(人3)を除く、空山隆児(人3)、篠浦、五十嵐の不振が原因だった。五十嵐に至ってはチーム内9位。主将の責任は果たせず、いまだ迷走は続いた。2週間後の全日本大学駅伝は4区原英嗣(人2)の脱水症状でまさかの途中棄権。だが、この伊勢路で光は確かに差し出した。原に襷が渡る時点ではトップから18秒差の4位。流れはつくれていた。五十嵐の棄権直後の5区を「気持ちを切らさずに、できる限りの走りを」と懸命に駆け抜ける。その走りは五十嵐特有の腰高で力強い動きが戻りつつあった。五十嵐にとってもチームにとっても、あと一歩の地点まで来ていた。
箱根駅伝前最後の大会となる府中多摩川ハーフマラソン。早大はいよいよその底力を見せはじめる。篠浦が62分台の好記録で4位に入ったのを筆頭に、主力四人が大幅に自己ベストを更新。徳俵に足がかかった状況が純粋たるランナーの本能を呼び覚ました。五十嵐の復調に呼応するかのようにチーム状態も明らかに上がってきた。
全日本のどん底の中に光を見いだし、府中で結果を出せたことでチームは変わった。「力を出せれば大丈夫。まずは全力で往路を取りにいく」と言う五十嵐の言葉にも力強さが増した。4年連続の山上がりが濃厚な五十嵐。学生最後の大舞台を「心残りががないように、区間新も視野に入れ走る」と誓う。涙に染まった大手町からのスタート。走りたくても走れなかった日々。もどかしさ、そして希望…。抱いた思い全てを胸に最後の箱根を待つ。「自分自身の誇り」という伝統のエンジ色の襷を肩にかけ、五十嵐は山の頂、光の差す方へチームを導く。伝統ワセダ復活へ。旋回する時の流れの中で、早大は今、未来への扉を押し開ける。
(橋本和弘)
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