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陸上競技特集
【特集】王者に輝け!! 第9回 木村慎太郎
今夏の世界選手権では100メートルに出場し、惜しくも2次予選敗退に終わった木村慎太郎(スポ4)。木村は「(日本選手権で)標準記録をギリギリで切って代表に入ったのですが、それでは世界とは勝負ができない。標準記録は切って当たり前、代表に入って当たり前になって、世界の舞台でどうやって勝負するかを考えないといけない」とベルリンの夏を振り返った。ホロ苦デビューとなった世界選手権はもちろん、日本学生対校選手権(全カレ)への意気込みなどを語ってもらった。
勉強の夏 「やっぱり常に挑戦していかないといけない」
――まずは世界選手権についてお聞きしたいと思います。世界のトップランナーと走ったご自身の手応えは
自分はまだまだ弱いということが痛感させられました。でも、動きの面では可能性があるなって感じたので、悔しさと強くなれるという手応えを感じた大会でした。
――世界を経験して心境の変化は
テレビで見ている側から自分がその場で走ったというところは0から1の差ぐらいはあるんじゃないかなと思います。レベルを痛感して断言できるぐらいダメだったので、差を感じました。なので、もっともっと自分の殻を破って、学生の中でも日本の中でもトップでい続けたいなという思いが強くなりました。
――1次予選はいきなり1組目になりました。どんな心境ですか
遅いよりは良いって感じですけど、やっぱり1組目というのは100メートルの中では先陣を切るわけなので、緊張半分、楽しみ半分という感じです。タイムというよりは通ることに意義があると思ったので、そこは達成できて良かったです。
――2次予選では大きく出遅れてしまいました
僕以外の人は自己記録が9秒台で自分だけ10秒かかっているというタイムでした。それでも、気後れしないようにやろうと思っていたのですが、空気にのまれていまいました。逆にマイペースにやりすぎたっていうのがダメというのもあるのですが、そういうことを知られたことも収穫ではあります。
――2次予選では警告を受けてしまうというハプニングもありました
あれは自分のルーティンを崩さなかった結果です。世界の舞台だから、余計に丁寧にやってしまって、(警告に)結びついてしまったのかなと。自分のために走るんですけど、人に迷惑かけないようなことも考えていかないといけないなと思いました。
――その後にブーイングを浴びてしまいました
正直、いい気はしないですよね。自分のせいなので、ある程度は仕方ないのですが、あれで完全に崩れてしまいました。それも含めて見直さないといけないです。海外に行ったら、何が起こるか分からないので、それに対応できれば良かったんですけど、そこがまだ弱いところかなと。
――ちなみに木村選手のルーティンは
簡単にいうと着くのが遅いんですよ。「位置に着いて」となったときに、ブロックの前に立って、一呼吸置いてしゃがんで、前にへたれこんで、背中伸ばして、ブロックに着く前に1回、膝を立てた状態でゴール付近を見てから、着くみたいな感じです。それだとみんなが着くころに、僕だけ前見ているみたいな。なので、明らかに遅いだろうってことで、警告取られたんだと思います。いろんな人と話し合った結果、早くしようとなりました。
―それは早速、全カレから
そうですね。(世界選手権後に)自分の中で走りの動きとかも変えたりしているので、積極的に変えていこうかなという感じですね。
――走りの動きの変更点は
(世界選手権では)早い人の共通項というか共通点を見つけて、こういう風にしたら良いのかというのを思いながらずっと見ていたので、それをあっちにいるときに試してみたら、いけるんじゃないかなっていう可能性が見えたので、今継続してやっています。僕の走りの場合、後ろ回転が強くて、地面に着いた時の足のポイントがちょっと後ろなんです。蹴りあげる動きになってしまう。それで接地のポイントを少し前にずらして、今まで以上に推進力が大きい感じがして、ロスが少なくなったんじゃないかと感じます。
――現在の練習での手応えは
あると言えばあるかなという感じです。(日本に)帰ってきてすぐ、練習してみたんですけど、そんなに動けているわけではないのにそこそこのタイムで走れました。まあ日が浅い分、試合で(結果に)出るかは分からないところなんですけどね。もっと動きが自動的に出せるようなところまで行ければなあと思います。
――残りのシーズンは試す機会になりますね
やっぱり、常に挑戦していかないといけない。守りに入る立場でもないので。思いっきりやろうかなという感じですね。
刺激の夏 「タイソン=ゲイ選手はすごくお手本になると思う」
――ドイツの競技場という雰囲気の違いは感じましたか
あんまり感じないですね。むしろ、お客さんが多いので、周りの雰囲気は良かったです。緊張はしましたけど、ああいう舞台に立てたことは自分の中で大きかったのではないかと思います。
――ベルリンのスタジアムは青いトラックで、青は集中力が高める効果があると世界選手権の開幕前は騒がれていましたが、実際いかがでしたか
(青いトラックは)珍しくもなくなってきているので、別に意識はしませんでした。どこで走ってもみんな条件は一緒なので、あの競技場が良いとかはあんまり考えたくありません。例えば、向かい風2メートルぐらいが常に吹いているところで走るのは嫌だなと思っていても、条件は一緒なので、そこで自分でカベを作ってしまうというのはダメだと思います。やっぱり気分で変わるというのが少なからずあるので、そこであんまり苦手意識とか持たないようにはしています。ただ(ベルリンは)低速だって言われていたんですけど、世界記録出ちゃっているので、やっぱり関係ないですね。
――ベルリンでの滞在というのはいかがでしたか
一言でいうとだいぶ暇ですね。外に行くのも近くのスーパーで食料を調達するぐらいですから。一応、パソコンは持って行って、それを活用したりしましたね。あとは他の代表の人たちの部屋に遊びに行きました。同じ年代の金丸(法大)や広瀬(慶大)とかです。リラックスしているときはだいぶリラックスしているので、陸上の試合をテレビで流しておいて、見て、「こいつすごいな」とか言います。世界ですから、やはり次元が違います。
――次元の違う世界の舞台について
今になって思うのですが、あまり戦いに行っていなかったという感じです。やっぱり、塚原直貴さんや高平慎士さん(ともに富士通)といった上の人たちは準決勝や決勝を目標にして、いかに世界と戦うか、日本の枠にとらわれない考え方をしていました。そこに差が表れるのではないかなと感じました。最初は代表になれたことがうれしくて、(日本選手権で)標準記録をギリギリで切って代表に入ったのですが、それでは世界とは勝負ができない。標準記録は切って当たり前、代表に入って当たり前になって、世界の舞台でどうやって勝負するかを考えないといけないですね。
――これからは代表になって、世界で勝つという意識なのですね
そうですね。代表になり続けることと、日本の常にトップにいて世界を見据えていきたい。
――そうした心境の変化が収穫となった
失敗した分、得たものも多かったかなという気がします。ただそれを学んだけど、それを生かせないまま終わってしまったら、(世界選手権に)行った意味もないし、何やっているのかなという感じなので。終わった今こそ、しっかりやらなければいけないなと思います。
――塚原選手と高平選手から大いに刺激を受けたようですが、外国人の世界のトップランナーで印象に残った選手はいますか
タイソン=ゲイ選手(米)が1番印象に残りました。アサファ=パウエル選手(ジャマイカ)の場合、予選は流して、抜いたところがあるのですが、ゲイ選手は予選から決勝までしっかり組み立てたレースをしているなっていうのとアップもとても丁寧にやっていたので、すごくお手本になるなと思いました。(決勝で)ウサイン=ボルト選手(ジャマイカ)に話されても自分のペースを乱すことなく、アメリカ記録で(ゴールに)入ったというのがすごいと思います。やっぱり、ああいう人たちは負けず嫌いが多いというか、自分が後ろにいるとどうしても力んでしまうところなのに、決勝の舞台でパフォーマンスを発揮しているのがすごいです。
結実の秋 「いい走りをしたい」
――いよいよ最後の全カレを迎えます
(来季は)僕も抜けますし、次の世代への第一歩でもあるので、(4×100メートルリレーの)予選では僕は走らないと思うんですけど、それでどこまで行けるか見てみたいですね。それでまた刺激を受けて、僕にもつながればいいし、相乗効果というかいい走りをして、みんなで一緒に上がっていきたい。
――全カレの目標は
順位やタイムは別にして、いい走りをしたいというのがあります。結果は後からついてくるので。まずは思い切りやることと(全カレ後も)まだまだ(試合が)続きますけど、集中力を切らさずに最上級生で最後の全カレなので、何か後輩に残せるものがあればなと思います。
――世界選手権を経験されたことで周囲の見る目も変わってくると思いますが
期待してくれればありがたい。叩かれるにしても注目してくれているということなので。どう変化するのか見てもらいたいと思います。あまりプレッシャーとかは感じない方なので、マイペースにやりたいです。
――最後に競走部のファンにメッセージをお願いします
(世界選手権では)不甲斐無い結果でしたけど、応援していただきありがとうございました。これからも期待に応えたいと自分で思っているので、みなさんの期待に似合った結果を残せられるように日々精進していきたいです。まだ弱いので、いっぱい失敗とかもすると思うのですが、温かい目で見てください。
(取材・編集 中島直輝、高畑 章)
◆木村慎太郎(きむら・しんたろう)
1987年(昭62)6月30日生まれのB型。172センチ、65キロ。奈良・添上高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:100メートル10秒21、200メートル21秒16。世界選手権の前、競走部の選手たちからどんな激励を受けましたかとの問いに「1年生の人たちからシューズ袋に一言書いてくれたものをもらいました」と回答。他にも地元で壮行会を開いてもらうなど、大きな期待を受けて世界の舞台に挑んでいた
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