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陸上競技特集
【特集】217.9km〜熱走の刻〜 7区 八木勇樹
7区を任された八木勇樹(スポ1)。区間2位と、傍から見れば1年生ながら十分な結果を残したように思えるが、当の本人は自身の走りに内心忸怩たる思いを持っていた。箱根前の状況から当日の走り、そして現在の心境について、腹蔵なく語っていただいた。
※この取材は1月17日に行ったものです
―今の練習は
正月の解散明けの練習ということで、おのおの次に出る試合も決まっているので、それに向けて体を作っています。
―次の試合は
僕は丸亀ハーフと千葉クロカンですね。まだ僕はハーフマラソンを走っていないですし、今年の11月の上尾ハーフもどうなるか分からないので、丸亀ハーフという感じだと思います。僕としては記録を狙うことはなく、のんびりやりたいと思います。千葉クロカンは12000で、1年生4人で出ると思います。
―ロードシーズンで重点的に取り組むことは
僕としては意識することなく、のんびりやっていきたいと思っています。
―箱根の結果について、時間が経って今どのようにとらえますか
チームが優勝できなかった中で、原因はどこにあるかというのを考えてみたら、やっぱり僕が1週間前に発熱してしまったというのがあって。僕に力がないからあのような結果になってしまったんだと思います。
―でも箱根後は、周りの人も喜んでくれたのでは
そうでもないです。むしろ、「箱根見たで」って言われて、見ないでほしかったっていうのが率直な感想です。走ることが目標ではなかったので。帰ってもあまり会いたくなかったというか、帰省したくなかったですね。
―発熱は1週間前に
1週間前から10日前くらいですね。丸2日寝込みました。(12月24日の)公開練習の時はもう。渡辺さん(康幸監督=平8人卒)がうまくごまかしてくれたみたいです。
―完全に回復したのは
回復してからポイント練習をやっても、体力が落ちてしまっていたので。体調が戻っていない中で、うまく箱根に間に合ってくれたのかなとは思います。でも、そこで影響があったというと言い訳になるので、そういうのを言い訳にするのではなくて、熱を出してしまったこと自体が力不足なので。僕は今も練習で集中してしまっているんですけれど、それでは体力が落ちてしまうのは当たり前。熱が出た云々ではなくて、熱を出したことが実力不足です。
―出場も危なかった
多分、前日まで僕は出ないということだったと思います。戻りつつあるということと、僕に賭けて下さったというのがあったと思うので、その期待に応えたかったんですけれど、予想通り、後半失速してしまって。力不足でした。
―7区と言われたのは前日
はい、前日の刺激が終わった後です。往路の結果次第で、と相楽さん(豊=平15人卒)から言われました。
―7区の下見は
4区はしていました。僕はもともと4区の予定で、三田(裕介=スポ1)が7区だったので。
―それは発熱で変わってしまった
そうですね。僕はもともと出るつもりではなかったというか、入らないと思いながら練習していたので、入ると分かった時は、気持ちの面で本当に集中しましたね。
―その中での区間2位は評価できるのでは
僕の中で区間2位というのは、正直、全然うれしいとも何とも思えませんでした。失速したレースでしたし、あの区間はいい選手がいなかったわけではないんですけれど全体的にタイムが悪かったので、僕がたまたまその中にいただけで。力としては、もっとタイム差を付けなければいけなかった。区間2位ということに対しては、本当、感想がないというか、何もないですね。僕の中で、区間2位だろうが20位だろうが、あの走りはどちらでもあまり変わらないですね。「区間2位で良かったね」と言われると、逆にあの走りで区間2位が付いてしまっていいのかと。区間賞じゃなくて良かったなと思います。あれで区間賞だったら恥ずかしかったです。
―発熱というのは関カレ前のものと一緒
全く一緒です。でも、精神面も含めて実力だったと思うので。僕が結果を出せなかったり、上に行けないというのはその辺りが理由だと思います。まだ僕は全く強くないので、自分自身を理解して、これからやっていきたいと思います。
―克服法もまだ分かっていない
そうですね。自分自身としてはあまり追い込んでいないつもりだったんですけれど、まだ追い込んでしまっていたのかもしれないです。まだ自分をコントロールできない弱さがあると思います。その点、三田や矢澤(曜=教1)は自己管理能力が高いので、見習っていきたいです。
―熱が出る前は順調でしたか
非常に順調にいっていて、自信はあったんですけれど、どうにもできなくて。感染的な風邪だったら手洗いやうがいで防げるので問題ないと思うんですけれど、これは僕自身の中での問題だと思うので。これはちょっと…きついです。
―これからも試合前になるんじゃないかという怖さは
あまり考えないようにやっていきます。今年は練習で絶対頑張らないと決めたので。とりあえずは何も考えずに、気楽にやっていきたいです。
―前半から飛ばしていたのは指示ですか
僕としてはガンガン行っているという感覚はなくて、普通にゆとりを持っていたので、本来の走りだったと思います。僕は20キロ以上を走るのは初めてだったんですけれど、案の定、体力がもたなかったなと。
―どの辺りできつくなってきましたか
8キロくらいですね。しんどくなるのは分かっていたので、そこからが僕の中での粘りどころだと思っていたので。正直、ラストの方は記憶に残っていないです。しんどかったですね。
―よくペースが落ちずに
僕の中の感覚だと3分20秒くらいかかっている感じだったんですけれど、実際はそんなにかかっていなかったので、熱を出す前にしっかり練習できていたのが良かったのかなとは思いますね。
―後ろの東洋大は意識していましたか
いえ、そんなに意識することなく、与えられた21.3キロでいかに自分の力を出すかということだけを考えていました。結果的に詰まってしまいましたけれど、僕としては、自分の走りをすることだけを考えていました。
―6区加藤創大選手(スポ3)の走りはどう見ていましたか
周囲の予想とは違っていたと思うんですけれど、僕が7区で、次の走者がもっと力のある選手だったら加藤さんも余裕を持って走れたと思うんですけれど、そうではなくて自分で広げないとという思いがあったから、ああなってしまったと思うので。加藤さんは本当に頑張ってくれたので、僕は僕の任された区間を考えて、どんな流れでも力を出そうと思っていました。
―8区に何秒差で渡したいというのは
最低でも差を広げたかったんですけれど、でも、あの時点のあの状態では、後悔はないというか、いっぱいいっぱいでした。
―八木選手はスピードランナーのイメージがありますが、長い距離への対応は
みんなと比べて長い距離の練習ができているわけではないですし、まだ足ができていないので、大学の環境にうまく合わせて、長い距離を走れる練習も入れていかないといけないと思っています。僕の特性を生かそうと考えるのではなくて、生かしたところで結局通用するわけではなくて、通用しないからこうなっているので。スピードは落ちるとは思わないので、そこは後で磨きをかけたらいいと思いますし、補わなければいけない点をしっかりと補って、とりあえず長い距離の足作りをしていきたいですね。
―でもよくその中で箱根は
正直、走り切れるかなという不安はありましたね。普通の状態で臨んでも、20キロ、というより10キロ以上のレースというのは初めてでしたし、プラス発熱をしてしまっているので、正直不安はあったんですけれど、その中でも走り切れたことによってある程度20キロ以上のレースというのが分かったので、この経験を今後に生かして、プラスになるような結果を出していきたいと思います。
―高校時代と環境は違いますか
違いますね。でも、環境によって左右されるような選手だったら一流にはなれないので。竹澤さんも厳しいところから来ているので、この1年間竹澤さん(健介主将=スポ4)と一緒にやれたのは良かったです。少しでも竹澤さんに近づけるように頑張りたいです。
―練習は竹澤選手と同じくらいできているとお聞きしますが
いえ、竹澤さんがうまく引っ張っていって下さっているだけです。竹澤さんに勝ったという表現が使われたりすることがあると思うんですけれど、それは全然違って、竹澤さんが僕を引き上げるために引っ張ってくれていただけで、竹澤さんとは全然力は違いますし、全て竹澤さんが上なので。練習では2番手という表現もされていますけれど、そういうのではなくて、僕が勝手にがっついているだけです。
―箱根前の集中練習ではゆとりは持てていなかった
持っているつもりではあったんですけれど、必然的にビルドアップでラスト5キロフリーとかになってしまうと、選考になるので、全力でやってしまっていて。タイム的にも状態は非常に良かったんですけど、それを本番で出せないのが僕の今の実力なので、まだまだということです。そこで勝とうが、本番で出せなかったら意味はないので。力があればゆとりを持ってもあえて行けると思うんですけれど、力がないのでがっついてしまっているんだと思います。本当の意味での力を付けたいです。
―お話を聞いていると、競技に対してストイックなのが伝わってきます
そうでもないです。悪く言うと、先のことを考えずにやってしまっているというのもあるので。自分で自分の体を把握しながら体調に合わせてやらないと、いつまで経っても続くと思うので。そういう意味では、自分の体に対して適当すぎるのかなと思います。ストイックならもっと自分の体を理解しようとすると思うんですけれど。あとは僕と気持ちと体がうまく連動するかというところです。
―今課題としていることはそこですか
とりあえずはのんびりするということです。ゆっくり、ゆとりを持ってのんびりのんびり。
―トラックシーズン中、レース後に足にまめができたとおっしゃっていましたが、今回は大丈夫ですか
できてしまいました。血まめができていて、結構色が変わってしまっています。まめができるということは多分、フォームが悪いということだと思うので、改善しなければいけない点はまだまだあります。
―同期の三田選手、矢澤選手の活躍はどうとらえていますか
あの二人は練習でも走れていたので、本番でも走ると思っていました。矢澤には出発の前日に「お前は練習できているんだから、区間賞獲れるよ」と言ったら、本当に区間賞を獲りました。1年生で重要な区間でしっかりと結果を残せるというのは、僕もメンタルの面で見習っていきたいです。三田はあの区間で、三田の力があれば当然区間新は出せると思っていましたね。それは一緒に練習している僕が一番分かっていました。三田は安心して見ていられますね。
―八木選手から見た二人の良さは
矢澤は粘り強いこと、三田は、がっつかないというところですかね。練習もそこまで追い込むことなくふわっと終わるので。やっぱりあの二人は強いですね。
―他校の1年生だと、5区を走った柏原選手はどんな存在ですか
今の僕では勝てないと思っています。追っていく立場なので、まだライバル関係と言えるような選手ではないんですけれど、負けると思ってやっていたらいけないので、近いうちには勝負をするとは思うので、そこで復活、ブレークの走りができるように、盤石の力を付けていくだけですね。
―柏原選手と高校時代にしゃべったことはありましたか
いえ、全くしなかったですね。柏原が出てきたのが遅くて、ちょうど1年前の都道府県対抗駅伝の時だったので。大学に入ってから初めて、出雲駅伝後に少し話をしたんですけれど、本当に謙虚でいい奴です。ちらっとうわさで聞いても、練習も強いみたいですし、陸上を本当に楽しんでいるなという感じがするので、自分との差はそこかもしれないです。でも、僕たちの代は大学に関係なく、みんな本当に仲がいいんですよ。
―お互い昔から仲がいいんですか
矢澤はあまり知らなかったんですけれど、三田は高1から合宿が一緒でしたし、中山(卓也=スポ1)は同じ兵庫で、中1から走ってきているので。中山とは、中学の地区が神戸市で一緒だったんです。僕も中学校から始めて、中山も中学校からで、あいつは急に強くなりましたけれど、自分は全く歯が立たなかったですね。全日中は僕は予選落ちでしたけど、中山は1500も3000も両方入賞していますね。
―そのころから意識していたんですか
僕の中で「こいつはやばい」というのがありましたね。とりあえず才能、能力が違いますよね。それでも僕が高校で引き上げてもらったというか、努力で力をつけていって、何とか戦えるようになって。僕でもこうなれるんだな、ということは思いましたね。
―将来はエースになりたいですか
そういうのも考えたりはしますけれど、今の僕が言えることではないです。現状で近いのは三田と矢澤だと思うので、僕はまずはあの二人に追いつけるように頑張って、それで、四人で柏原に追いつけるように頑張ってという感じで、切磋琢磨していきたいです。
―今季を総括すると、どんなシーズンでしたか
結果が出ない中で、長かったなという感じです。自己ベストを更新したと言いますけれど、僕の中で更新したという気がまったくしないので。失敗することも必要とは言いますけれど、同じ失敗なので、この1年、成長したとも思わないですし、あまり得たものがないですね。形としてまだ何も実行できていないですし。
―苦しい1年だった
結果が出ない中でのモチベーション、気持ちの持ちようが本当に難しいなと。正直、僕の中で今方向性が定まっていないというか、具体的な目標も、特にこうしたいとかも思えなくて。でも、丸亀だったら丸亀で、千葉クロカンだったら千葉クロカンでという感じで、与えられた大会をしっかり走ることだけを考えます。強くなりたいと思えないレースだったら僕は出ないので、そこはうまく持っていけたらいいなと思います。
―それでも、ある程度数字には表れているように見えますが
一人一人のレベルというか、競技力の低い人が頑張ったらそれは評価されると思うんですけれど、高校時代にいい成績を出してきた中での僕の今の成績というのはまったく評価されるべきものではないので。高校時代のまま来ていて、例えば関カレで入賞していたりめちゃくちゃ良かったら、全日本の区間2位も失速という感じで書かれていたと思うんですけど、復調と書かれているということは、その程度の選手になってきたのかなと。自己ベストの13分50秒と28分55秒というタイムも、僕の中ではうれしさが全くなさすぎて、もはや自分のタイムなんだろうか、という感じなので。みんなはある程度記録に一喜一憂すると思うんですけれど、僕は何にもしなかったというか。うれしくもないし、悲しくもないし、別にこのタイムはなくてもいい、という感じでした。あってもあまり意味のないタイムですね。
―これくらいのタイムを出したいというのは
これくらいになりたいというのはあるんですけれど、それを口で出すのではなくて結果で出したいので、ここではあえて言わずに。とりあえず、13分50秒というのは僕の中では何の役にも立たないですね。13分50秒で走ったところで、強くもないですし、五千も一万もこのタイムを誇れるわけでも何でもないので。逆に恥ずかしいですね。このタイムを早く消し去りたいです。
―でも今は気楽にやりたい
春シーズンのどの大会で…とかではなくて、ぼちぼちやりたいですね。僕の中でキャラ作りというか、高校時代トップで来ていたらその上を狙ったことを言わないといけないというのがあって、そこであえて僕は大きいことを言っていたんですけれど、実際に僕が思っていることとは違うことを言ってしまっているので、今はそのギャップが来ているのかなと。高校時代は留学生に勝ちたいと本気で思っていたので言っていましたけれど、留学生に勝ったからといってその上が見えてきたとはまったく思っていないですし、勝てたのはレース展開などに恵まれていたからで、たまたまなので。大学に入った時は、本当、強がっていましたね。世界ジュニアもありましたし、世代のトップとして出ないといけないという思いがあったので。いろいろ言っていることに対して周りから言われるんですけれど、分かってはいるんですけれど、僕の中でこうでなければいけないという像があったので、その像に当てはめて無理やりいろいろ言っていたんですけれど、疲れたので、これからはのんびりやっていきたいです。高校時代縛られ続けていたので、楽しみながらやって、より強くなりたいです。結果は付いて来るものであって、あらかじめ言ってそれを実行するというものではないですし、勝ちたいという欲が出ている時点で勝てないと思います。高校の時も、そういうのにはまったく執着していませんでした。高校2年生の時から、ただそのレースが楽しみだっただけだったので。わくわくするようなレースがしたいですよね。そういうレースにめぐり合うためにはやっぱり、僕が力をつけて最高の試合にたどり着くことが必要だと思います。
(取材・編集 石川祥子)
◆八木勇樹(やぎ・ゆうき)
1989年(平元)10月17日生まれのB型。177センチ、59キロ。徳島・西脇工出身。スポーツ科学部スポーツ医科学科1年。自己記録:五千メートル13分50秒14。一万メートル28分55秒24
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