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陸上競技特集 第7回 前田悠貴
【特集】譲れぬ想い〜ALL FOR HAKONE〜 第7回 前田悠貴
昨季、箱根デビューを飾り、優勝メンバーに名を連ねた前田悠貴(スポ3=宮崎・小林)。そして今季、トラックで自身の記録を次々に塗り替えると、出雲、全日本にも出場を果たし、大学駅伝皆勤を射程圏内に納めている。そんな成長著しい前田は、何を思い2度目の箱根路に挑むのだろうか――。
※この取材は11月26日に行ったものです
「自分が出ることを一番に考えていた感じでしたね(笑)」
昨季『三冠』メンバーである前田
――きょう(11月26日)から集中練習。調子はいかがですか
上尾シティハーフマラソン(上尾ハーフ)が終わって少し疲れが出て、痛いところが出てきています。一応今週までは様子を見てという感じです。
――上尾前に痛めた捻挫(ねんざ)の具合は
若干その影響もあってフォームが崩れて、捻挫した所以外に痛みが出てきたのかなというのがあります。でも、思った以上に上尾ハーフで走れたので、その反動でもあるのかなと。
――本格的に集中練習に参加していくのは来週以降になりますか
そうですね。来週の水曜日くらいからは入れれば良いかなと思っています。
――それまでは別メニューをこなす形でしょうか
とりあえず痛みがあると練習もきつくてできないと思うので、痛みがなくなるまではゆっくり休む感じですね。
――話を移します。早いもので前回の箱根からもうすぐ一年が経ちます。いま振り返ってみていかがでしょうか
自分が出ることを一番に考えていた感じでしたね(笑)。とにかく出たいという気持ちでした。結果的には出場できて、優勝もできて、いままでやってきて一番うれしい大会でした。
――では、そこから今季を振り返っていきたいと思います。まず、2月の丸亀ハーフマラソンでは、自己記録を1分以上塗り替える好走でした
12月に入ってから自分の中で力が付いているということが実感できていました。なので、1分以上記録更新したんですけど、1時間2分台を狙えたんじゃないかという気持ちもありました。あの時は駒大の攪上くんと一緒に走っていたんですけど、30秒ぐらい負けてしまったので100点のレースではなかったですね。
――箱根、都道府県対抗駅伝、更にはテスト期間とハードな日程な中でのレースでしたが
調子自体は確かに箱根の時の方が良かったです。それでもあれだけのタイムで走れたということは自信になりました。
――その後は震災の影響で立川ハーフマラソン(立川ハーフ)が中止になるなどありました。その間はどのような練習をされていたのでしょうか
実業団の合宿とかに2週間くらい行ったりしていました。それは立川ハーフに向けてだったんですけど、それが無くなってしまって…。それに、春の合宿も行けなくなってという状態でしたね。でも、ユニバーシアードのハーフ選考会が4月になったので、その1万メートルの選考レースに向けての練習をしていました。
――実業団の練習に参加されることは今までにもあったのでしょうか
高校の時から何回か行っていました。けど、高校の時は少しレベルを落としてということだったので、実業団の練習を最初から最後までやるというのは初めてだったと思います。
――通しで参加されていかがでしたか
結果的には最後の方は脚が痛くなって全部はできなかったんですけど、やっぱり大学よりも質も量もレベルが高いので、そういう世界を知れたという面で行って良かったですね。
――特にレベルの差を感じた点は
実業団の選手に混ざると持ちタイム的にも下の方ですし、余裕を持ってできる練習というのが大学で練習をしている時よりもずっと少なかったです。
――その後、4月に入りトラックシーズンが始まりました。そのころの調子は
あまり良くは無かったですね。でも5000メートルで自己ベストが出たので、そこまで調子が良く無くても最低限の走りができるようになったと感じました。地力が付いたなって。
――更に6月には1万メートルの記録も更新されました。1万メートルの自己記録更新は久々でした
そうですね。高校の時以来です。
――距離の長さにも慣れたという感じでしょうか
6月の1万メートルは、関東学生対校選手権(関カレ)のハーフで失敗した後だったので、ここで失敗したらもう駄目だなと思って狙っていったレースでした。その時は本当に練習を落とし落としでやって、1万メートルを走れれば良いや、という考えでやっていましたね。結果的には記録が出たので良かったんですけど、その後に故障や体調不良になってしまったので・・・。
――狙ったレースでしっかり結果を出せたという点に関しては
狙ったところでしっかり走れたということは大きかったと思います。
――元々得意だとおっしゃっていたトラックで自己記録を連発。特に何が伸びたことによる結果だと思われますか
大学に入って試合や記録会をたくさん走って、その中でどこでどう粘ればどの程度走れるのかというコツがつかめてきたように思います。その分攻める走りがちょっとできなくなってしまったんですけど…。でも、そういった点で少し安定感が出てきたというところにつながっているんだと思います。
――話の流れで先ほど登場した関カレのハーフでは悔しい結果となりました
自分の中で入賞は当然だと思っていました。本当に勝ちにいくレースをしないと良い順位は取れないと思ったので、前半から先頭に付いて行って行けるところまで行こうというのが自分のレースプランでした。失敗はしたんですけど、気温が暑い日のレースの方法や合わせ方をあのレースで少しつかめたと思います。
――5月にしてはかなり日差しが強く、コンディション的に厳しいレースでしたね
そうですね。終わった後に運ばれたので(笑)。何だか過呼吸みたいな状態になって、そんなのは初めてでした。でも、来年また走ることがあれば今度はしっかり走れると思います。
「まだ、主力ではない」
――夏場のお話に移ります。夏季は調子を落とされていたとのことですが
ホクレンディスタンスチャレンジの後に体調を崩して、7月中は風邪をひいたりしてずっとまともに走っていないですね。それで、8月入って走り始めたんですけど、二次合宿の2日目くらいで故障して。なので、本格的に練習を始めたのが9月に入ってから。三次合宿の前からでした。まあでも、去年からケガなくずっとやってきていたので、ちょっと焦りはしましたけど、良い休みになったと開き直ってやるしかなかったです。
――どういった対策を
通常、皆は8月、9月に走り込むんですけど、僕は遅れた分9月、10月に走り込んでその分を取り戻すようにしていました。
――その状態のまま駅伝シーズンに入ってしまう不安は
出雲はもうちょっと時間が欲しかったですね。でも、選ばれたからにはやるしかないですし、走るからにはちゃんと走らないといけない。けど、なかなか思うように走れなくって悔しかったですね。
――不安の残る状況のまま出雲駅伝のエントリーメンバーに選ばれたわけですが、渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)からは何か言われましたか
元々は全日本くらいからと言われていました。けど、思ったより調子が上がるのが早かったので。直前まで走るかは分からないけど、可能性はあるから準備はしておけ、と言われていました。
――ご自身としては出雲を走る気持ちの準備はできていましたか
僕は全日本からという気持ちだったので。でも、やるしかないので何とか頑張りたかったんですけどね…。
――調子はあまり良くない状態でしたが、ずっと出たいとおっしゃっていた出雲に出場しました。出ることができた、ということに関してはいかがでしょうか
まあ、チーム状況が良くなかっただけに、出られたことがうれしいとかはなくて、出るからにはちゃんと走らないといけないという思いでした。
――レース後には夏場の不調を「駅伝ではごまかせなかった」とおっしゃっていましたが
やっぱり駅伝はトラックみたいに大勢で走るものではないので、一人で速いペースで突っ込んで粘る、というレースをしないといけない。けど、夏にそういった我慢をする練習をしていなかった分そういったボロが出てしまったのかなと思います。
――それでも区間3位。走れていないなりにまとめてきたという印象を受けたのですが
3番といっても東洋大と駒大に負けているので。やっぱりエース区間で差がつかない分、つなぎで差がつくと思うので、優勝するためには本当はそこで勝たないといけない。けど、そこで二校に負けてしまったので…。僕もっと区間順位が悪いと思っていたんですけどね(苦笑)。他のチームとの差では無くて、東洋大と駒大との差が重要だと思うので、その点でやっぱり3番じゃ優勝もできないですし、まだまだです。
――手応えよりも二校との差を感じる方が大きいですか
去年までだったらもっと区間順位が悪かっただろうと思うので、その点は力がついたと思います。けど、チームの目標は優勝なので。つなぎで区間賞を取らないとやっぱり差がつかないので。
――何か出雲での思いではありますか
『お別れパーティー』が終わった日にあって、他の大学の選手とも話したりして、そこは楽しかったですね。鹿児島が出身なので第一工大の選手とたくさん話しましたね。知っている人もたくさんいたので。
――全日本では過去2年とは違う5区での出場となりました
全日本の時は出雲よりも調子も良くて、それで元々5区か7区の予定でした。調子も良かったので渡辺監督、相楽コーチ(豊、平15人卒=福島・安積)からも「攻めの意味の5区」と言われていました。でも、実際にレースになるとやっぱり思ったよりも駒大との差がついたし、東洋大とも少し差がついていましたし。その差もありますし、同じ区間の駒大と東洋大の選手が強かったので力関係とかを見て、いまいち攻めきれなかったという感じでした。
――以前は頭で熱くなって突っ込んでしまいがちだとおっしゃっていましたが
やっぱりそういった気持ちというのは持たないといけないと思うんですけど、去年の駅伝は先頭でもらってということが多かったので。先頭でもらってそういったバカみたいな走りはできないですから、悪い意味で先頭で走ることに慣れてしまった面はありますね。そういうのがあって思ったよりも攻められていないというのはあるかもしれないです。
――出雲、全日本共にチームは3位という結果です
関カレも全カレも優勝して、何となく勝たないといけないという思いが強かったと思います。でもその中で2回負けて、そういったプレッシャーも無くなって。負けてしまったんですけど、逆に箱根では力を抜いて本当のチャレンジャーの気持ちでできるのではと思います。
――両方とも、1、2位は東洋大、駒大ですが、両校の印象は
東洋大は柏原さんが居るので、そこまでにどう繋ぐか、といった点で絶対に失敗しない安定した走りが上手いと思います。駒大は去年の僕らみたいなチームですね。やっぱりタイムが早い選手が多いのでスピードで押していくチームですね。一番力を持っているのは駒大じゃないかと思います。
――早大を含めた三校が『三強』と言われています
本当のベストメンバーがそろって初めてそこに加われると思うんですよね。やっぱり故障者がいたり、調子が悪い人がいたらすぐに3番になってしまうので。いま抜けているメンバーや調子の上がらないメンバーみんながそろってこそ初めて戦えるのかなと思います。
――上尾ハーフでは1時間3分16秒の好走でした
監督からも言われたんですけど、上尾は個人のレースだったのでそこで守りに入っても仕方がないって。だから先頭について行ったんですけど、結果的に後半に落ちて4番でしたけど、ああいった速いペースで走ることはなかなかないですし、突っ込んで走るレースを箱根前に経験できて良かったかなと思います。
――速いペースで突っ込むことと粘ることがどちらもできたレースだったのでは
スタミナは去年よりも付いてきたと思うので、突っ込んでも最低限のペースで刻んでああいうタイムでまとめられたのは良かったと思います。
――実戦の中で“主力”である矢澤曜(教4=神奈川・多摩)選手等を抑えての部内トップに手応えを感じますか
矢澤さんには最後の方に詰められていましたし、矢澤さんの調子が良ければ先頭集団に居たはずですから。矢澤さんに勝ったというよりも、ずっと苦しいレースが続いていた矢澤さんがまだまだだとは思うんですけど浮上のきっかけをつかんでくれたことの方がうれしいです。矢澤さんが頑張ってくれないとチームはなかなか上がっていけないと思うので。
――レース後に監督が前田選手は「主力だから走って当たり前」とおっしゃっていましたが
まだ、主力ではないと思いますけど…。僕がつなぎで走っていて、そういう選手が頑張ることでみんなも頑張ってくれれば良いなって。そう言っていただけることはうれしいですけどね(笑)。主力だったら東洋大の選手が二人前に居たので、もう少し近い位置で走りたかったですね。
――今季の実戦を振り返ってみると、浮き沈みもあまりなく安定した走りを見せているように思います
トラックは振り返れば評価できると思いますけど、駅伝の二つは区間が区間なので。やっぱり主要区間を走れるくらいの力はあるけど、つなぎに回って区間賞をとることが理想なので。いまはまだ、ここしか走れないからという感じなので、駅伝は満足のいく走りではないですね。箱根はちゃんとやらないといけないです。
「自分のためだけじゃなくて、チームのために」
直前まで不調ながら出雲に出走
――冒頭にも、箱根に関して軽く振り返っていただきましたが、少し方向を変えて。箱根を走ったことで意識が変わったということはありますか
箱根を走って走れたことはうれしかったですけど、区間賞が取れなかったことが悔しくて。しかも4区だったので、もう少し目立つところを走りたいというのもあったり…。やっぱり勝たせてもらった箱根でしたね。だから今度は自分がもっと仕事をしてやろうって、もう少し上のレベルを見てやっていこうという気持ちになりました。
――そういった意識の変化が今季の好調の一端でもあるのかと思うのですが。いかがでしょうか
やっぱり自分のためだけじゃなくて、チームのためにという気持ちは去年より大きいです。もう3年生ですからチームを引っ張っていかないと。もっと周りを見ながら自分も頑張っていかないといけないですね。後輩も速いので負けたくないという思いもありますし。それに、まだ僕の役割は全然果たせていないですから。なかなか調子が上がらない中でも区間で3番4番というのには満足はしていません。去年みんなに勝たせてもらった分、ことしは自分もしっかり仕事をしないといけない。下手な走りはできないなという気持ちが大きいです。
――昨季は、箱根は走れたことがうれしかったとおっしゃっていましたが、その後は主要区間を走りたいと良い意味で欲が出てきたように思います
優勝するためにはそういう走りをしないといけないと思います。やっぱり優勝を狙うチームなのでそういうくらいの気持ちでやらないといけないんじゃないかと思います。
――もしも箱根を走っていなかったらそうは思えていなかったかもしれない、というのはありますか
そうですね、ことしもとにかく出たいという思いだけでやっていたかもしれないですね。出ることで上が見えた、そういう点では2年目で出られたというのは自分のレベルアップにもつながりましたし、優勝もできて本当に貴重な経験になりましたね。
――視野が広がったという感じでしょうか
まあ、出ないよりかは(笑)。以前よりも上を目指せるようになったかなと思います。
――やはり箱根と他の駅伝とでは大きく違いますか
箱根というのは大学に入る前からの憧れでしたし、注目度も全然違いますから。全日本とかに出ても箱根に出られなかったらって。1年の時は箱根に出られなくて悔しい思いをしたので…やっぱり箱根なんですよね(笑)。
――箱根を意識したきっかけは
お正月には大体みんな観ているし、箱根と言ったらみんな分かりますし。だからワセダに行くってなった時に「箱根走れよ」ってみんなから言われたのもありますし。みんなが関心を持っているから、学校の先生だとか今までお世話になったたくさんの方々に元気な姿を見せられるのが箱根なのかなと思います。そういったことが箱根を特別と思う理由ですかね。
――お話を伺っていると主力としての自覚が芽生えてきたようにも感じます
僕の場合は本当につなぎの区間が多いので。でも、優勝するにはやっぱりそこなんですよね。だから、本当にやらなきゃいけないというプレッシャーもあります。けど、その中でも勝つにはやっぱりつなぎでやるしかない。主力としての意識の芽生えというよりかはやらなきゃいけない、それだけです。
――ご自身としてはまだ主力と言うには足りない点があると感じている
主要区間を走って、なおかつそこで結果を残せる選手が本当の主力だと思います。なので、まだそこを任されていない分、まだまだ頑張らないといけないと思います。
――ことしのチームはどのようなチームでしょうか
大迫(傑=スポ2、長野・佐久長聖)はユニバーシアードでも優勝して、いまのうちのエースですね。なので大迫を中心にしたって感じですね(笑)。でも大迫だけを頼っても駅伝では勝てないですから。ことしはみんな持っている力をまだ出せていないと思います。いまは3番ですけどみんなが良い状態でレースができれば自分で言うのもなんですけど…すごく強いチームになるんじゃないかなって思います。
――そのチームの中で前田選手の役割は
流れを大きく変えるような仕事はできないと思うんですけど、絶対僕は出ないといけないし、その中でしっかりとした走りをしないといけない。とにかく任された区間で区間賞を取るということが僕の役割だと思います。
――走りたい区間はありますか
どこでも良いです。でも、主要区間を任されればそれはそれで頑張らないといけないですし、つなぎなら区間賞を目指して頑張らないといけないですし。戦術にもよりますけど、僕は大学に入った時から1区を走りたいというのがあったので、矢澤さんがいますけど、どこかと言われたら1区ですかね。高校の時は1区が多かったので、集団での走りに慣れているし、走り方も分かっている。まあ、本当に任されたところを走るだけなので(笑)。あと2回あるのでそのどちらかでぜひ走りたいなって。
――今回昨季年おっしゃっていた、三大駅伝皆勤賞がかかっています
それよりも出雲と全日本では使ってもらったのに良い走りができなかったので、その分を箱根でチャラにできるように、って感じですね。三つ出られてうれしいみたいなのは全然ないです。箱根こそは絶対走らないといけないし、満足できる走りをしたいという気持ちだけですね。
――2回目の箱根。どんな走りをしたいですか
出雲、全日本はどこか自分の限界を決めて攻められなくて、後味が悪いものになってしまいました。レースの状況にもよりますけど、上尾で突っ込むレースをして何とかまとめられたので、ここからの集中練習でスタミナをつければ、上尾で最後失速してしまった分も補えると思っています。やっぱり現状では3番目なので攻めていく走りをしないと勝てない。だから、出雲、全日本を踏まえてしっかり攻めの走りをしていきたいと思います。
――ありがとうございました!!
(取材・編集 谷口奈津希)
目標は区間賞です
◆前田悠貴(まえだ・ゆうき)
1991年(平3)2月16日生まれのO型。スポーツ科学部スポーツ文化学科3年。宮崎・小林出身。自己記録:5000千メートル14分03秒29。1万メートル28分54秒34。ハーフマラソン63分03秒02。2011年箱根駅伝4区55分06秒(区間2位)
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