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 応武監督インタビュー 3月21日 安部寮



 応武監督が語る 今年のチーム、そして「野球」

試合を見届ける応武監督  日本列島が世界一の余韻に酔いしれていたその時、早大野球部指揮官、応武篤良監督(昭56教卒)が静かに語りはじめた。数々の国際試合で日の丸を背負った野球人の目は何にも代え難く重く、説得力があった。教え子である松中信彦(福岡ソフトバンク)や渡辺俊介(千葉ロッテ)らが出場したWBC(ワールドベースボールクラシック)で日本が優勝を決めた直後、応武監督にお話をうかがった。早大野球部はもちろん、野球哲学に至るまで、内容は多岐にわたった。

 〜WBCについて〜

 ―WBCで先程、日本が優勝。応武監督もIBAF(野球ワールドカップ)では打撃コーチとして日本代表に参加しキューバと戦いましたね
 社会人時代の教え子でもある松中が4番で、投手の主軸を渡辺が務めていたというのは、悪い気はしないですね。素直にうれしいですよ。(ワセダの)後輩である和田(毅=平15人卒)や青木(宣親=平16人卒)もいるし、特にそのメンバーは気になりました。優勝はうれしいことですね。アメリカがメキシコに負けたのが運がよかった。そこから始まった。野球は何が起こるか分からないな。

 ―誤審問題は日本中で波紋をよびましたが
 これだけ文明がすすんでいるし、ストライクゾーンをセンサーにしたりVTRを導入することはできるが、実際は未だに人間の目でジャッジする曖昧なスポーツ。少年野球から始まることですが、ミスジャッジがあるから野球はおもしろい。だからそうしないんだろうね。まあそんな不公平をやるアメリカは立派だよ。(笑)また、アメリカを不公平と言えるぐらい日本人の目が肥えてきたんでしょう。

 〜野球部の新チームについて〜

ベンチでは一番大きな声を出している宮本  ―去年のチームと今年の新チームのちがいは何ですか
 去年のチームをまとめていた4年生は、1年生から試合にでて活躍する選手が多かったのに対し今年の4年生は1年生の頃は試合にでて活躍していない。ベンチにいたけど出場する機会がないとか、ほとんど結果を残せずにいた者ばかり。そう考えると、去年の30人に比べ40人と数はいるが核になる選手がいないな。あえていうなら宮本(賢)や大谷(智久=ともにスポ4)だが、それでも越智大祐(平18人卒)に比べるとエースとはいえない。

 ―新チームの印象は
 リーダーがいないチームかな。ピッチャーがキャプテンであるし。武内(晋一=平18人卒)と比較するのはかわいそうだけど。まぁ大学というのは毎年選手が入れ替わるものだし。だから今はfor the teamの精神でチームが一丸となってがんばっている。誰が引っ張る、というわけではない。

 ―アメリカキャンプはどうでしたか
 春に成果を出す為に渡米したわけだが、選手はそれぞれ試行錯誤して実戦に追いついていない段階。成果はあると思うね。アメリカの選手は体格もよく、施設・環境もまったく違いカルチャーショックがあった。じゃあ何をどうすればいいかが真っ暗闇の状態だったが、メンタル面ではなんとかしないとという気持ちが出て、収穫があったのではないだろうか。

4番に座る北崎  ―主将の宮本選手、副主将の北崎寛和選手(法4)については
 宮本は今は登板が少ないし、「声出しキャプテン」だね。まだ真のリーダーになりきれてない。もっと暖かくなれば登板機会も増えるだろうね。北崎はオープン戦で4番に据えてそこそこ結果を出している。彼はバイスキャプテンシーがあるね。渡米した時は7番を打たせていたんだけど、自分でいろいろと見て聞いて真似て、何かをつかんだみたい。オープン戦でも自信ありげにやってるでしょう。

 ―マークしているチームとかはありますか
 あえて言わない。いつも先を見すぎて足下をすくわれる。去年も10連勝しようと意気込んだ秋季リーグ戦でいきなり初戦で東大に負けて、気持ちの切り替えができなかった。そこがプロとアマの差。プロは切り替えが明らかに違う。今季はそんなことがないように目の前の対戦校に全力を出そうということです。ひそかに思ってはいますがね。(笑)だからまずは東京大学さんが目標です。

 ―開幕ポジションの青写真はありますか
 一生懸命やってる他の選手には言いづらいけど、二塁の上本(博紀=スポ2)と中堅の前田(将希=社4)の一、二番打者には期待している。上本は春と秋ベストナインをとったルーキーですし。今年も彼が全試合出て、リードオフマンをつとめてほしい。前田も春ベストナインをとったけど、小さい体を俊足で補っている。この1,2番の出塁がカギになると思います。

俊足が武器の前田  ―では、このポジション争いに注目している、というところはありますか
 ファーストと、キャッチャーですかね。ふたつとも前の二人(主将・武内と副将・山岡剛=平18社卒)が引っ張ったポジション。最終的にはキーになると思います。

 ―新入生に気になる選手はいますか
 使ってみないとわからないからオープン戦で使っている。リーグ戦で、早慶戦で使えるか吟味している最中。できそうならリーグ戦の25人枠に入れるしね。逆にじっくり基礎からやってもらうかもしれないし。松下(建太=明徳義塾高)と丹羽(力人=土岐商高)には注目している。

 〜監督業について〜

 ―監督に就任して1年がすぎましたが、プレッシャーは
 シンプルな質問だけどもっとも難しいね。自分が学生で選手だったころよりはるかに感じてる。140人以上の部員を大人ひとりで指導教育する難しさもあるし。最近はスポーツ精神に関する不祥事、事件が多い。今の若者の心を理解することからはじめている。今昔物語じゃないけど、今と昔の野球、社会が本当に違っているのかを、学生の目線で見て指導しようと。

 ―早大野球部の伝統はやはり感じますか
 日がたつにつれて、重く感じる。例えるなら重いリュックサックにどんどん荷物を継ぎ足されているような。これが伝統。野村さん(徹前監督=昭36政経卒)が頑張れと他人事のように言いますけど、野村さんからもらったバトンが今になると1トン、10トンもあるように重く感じる。今の野村さんは楽しそうですね。(笑)でももちろん相談にも乗ってもらいますよ。(重みというのは)監督をやったものじゃないとわからないですよ。あの人の気持ち、苦しみが身にしみて分かるよ。

選手を指揮する応武監督  ―野球の監督とはどういうものなのですか
 社会人チームの監督をやってきたが、監督というのは非常に苦しい職業。監督は孤独だということは断言できる。WBCの王さんも、長嶋さんも、原さん…同級生だから原か(笑)、原も(孤独を)感じてやっているに違いない。

 ―では学生を指導する楽しみというのはありますか
 勿論あります。去年4年生とつきあって、最後早慶戦で沢山選手を使ってあげたら、みんなにありがとうと言われました。抱き合って武内も号泣して。特に佐竹(功年=平18人卒)はリーグ戦の明治戦で負け、二度と使わない、と「干していた」が、最後(の早慶戦で)マウンドに送ったら、マウンドで泣いているんですよ。それを見て、心が洗われましたね。選手は一緒に感動できる、純粋な人ばかり。ワセダの学生には素晴らしい人が多い。

 ―大学での監督業は社会人チームの監督とは違いますか
 やっぱり学生と社会人は違うな。指導者も甘えず真の教育を手に抜かり無くしていきたい。学生が指導者を認めるように。それを強く感じました。

 ―監督にとって理想の野球とは
 そんなの分かったら苦労しないですよ。(笑)だから面白いんですよ。番狂わせが。野球は打者が3割打って、投手で言えば3割が打たれる。マイケルジョーダンがもしもフリースローを3割しか決められてなかったらあれだけの人になっていない。だけど野球は3割でいい。「絶対」がありえないんですよ。ラグビーやバスケは強いものが自然と勝つ。野球ほど番狂わせがあっていい加減なことはない。だから毎日練習するんですよ。でも答えがわからないままユニフォームを脱いだりバットを置くんです。

 ―最後に春季リーグ戦の目標、抱負を聞かせてください
 そりゃズバリ優勝だよ。いつ聞いてもそう言うよ。特に早慶はいつも一番じゃないと。私学の雄として。全員が卒業して、野球も強い、文句あるか、というのが私自身OBとして、理想とすること。文武両道の常勝軍団がワセダ。これは他大学では実現できないからね。勝つためではなく、勝ち続けるために、目の前の敵に全力で挑む。「さすがワセダ」と言われるような試合をするので、応援よろしくおねがいします。

 ―蛇足ですが早稲田実業のセンバツ出場について感想を聞かせてください。
 ガンバレと言いたい。自分は(ワセダの)総監督だと思っている。早実の監督とは学生時代、一緒にやってるしね。ワセダでやる7年のうちの3年をそこ(早実)にいるものだと思って(笑)。甲子園で冠をとってワセダに進んで、神宮で暴れてほしいね。

 早大野球部の監督とは背負うものが重い。100人を超える選手、多くのファンの声援、プレッシャー。いやそれよりも伝統の重みは果てしなく重いものなのだろう。しかしそれは監督のバトンを受けたものしか分からない。第17代目、応武篤良監督の取材を通してそう感じることができた。

(取材・編集 中里顕、堀和彦、牧野賢志) 






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